数学のまとめノート

「順列」とは

いくつかのものからいくつかを選び順番に並べる並べ方のこと。

階乗

自然数 $n$ について

$n! = n \cdot (n-1) \cdots 2 \cdot 1$

とする

定義

$\displaystyle {}_n \mathrm{P}_r = \frac{n!}{(n-r)!}$

$= n \cdot (n-1) \cdots (n-r+1)$.

ただし, $n$ と $r$ は $n \leqq r$ を満たす自然数である. なお,

${}_n \mathrm{P}_n = n!$

である.

A. 順列の計算の意味

  1. $n$ 個のものを並べる順列の総数は $n!$ に一致する
  2. $n$ 個のものから $r$ 個を選んで並べる順列の総数は ${}_n \mathrm{P}_r$ に一致する

B. さまざまな順列の総数

  1. 円順列$n$ 個のものから $r$ 個を選び円形に並べる順列の総数は $\frac{{}_n \mathrm{P}_r}{n}$ である
  2. 重複順列$n$ 種類のものを同じものの重複を許して $r$ 個並べる順列の総数は ${}_n \Pi_r = n^r$ である
  3. 同じものを含む順列$n$ 個のうち $s$ 個, $t$ 個, $\cdots$ が同じもので, これらをすべて並べる順列の総数は $\frac{n!}{s! \cdot t! \cdots}$ である
  4. 完全順列$n$ 個のものを, $k$ 番目のものを $k$ 番目以外に並べるときの順列の総数は $\displaystyle n! - \sum_{k=1}^n (-1)^{k+1} {}_n \mathrm{C}_{k}(n-k)!$ $\displaystyle =n!\sum_{k=0}^n\frac{(-1)^k}{k!}$ である

ポイント解説

注意

$n! = {}_n \mathrm{P}_n = n!/0!$ より

$0! = 1$

で, ${}_n \mathrm{P}_0 = n!/n!=1$ より

${}_n \mathrm{P}_0=1$

.

A

樹形図を計算で数え上げる;$3!$ の例

B

(1) $n$ 通りずつ重複する

(2) $r$ 箇所それぞれ $n$ 種類ずつ選択できる;

(3) $s!$ や $r!$ 通りずつ重複する

(4) 余事象は「どこかは固定される」であり $\displaystyle \sum_{k=1}^n (-1)^{k+1} {}_n \mathrm{C}_{k}(n-k)!$ で求まる;

発展

ガンマ関数 $\Gamma(x)$ は $n \in \mathbb{N}$ のとき, $\Gamma(n+1)=n!$ であり, 階乗の拡張である. なお, $\Gamma(x+1) = x \Gamma(x)$ を満たす.

順列の具体例

順列の考え方を応用した並べ方の総数

じゅず順列

$n$ 個の玉でじゅずを作る場合の数$$\frac{(n-1)!}{2}$$

隣リ合う順列

大人が5人・子どもが3人いる。
全員が一列に並ぶ。
子どもが全員隣り合う順列$$(5+1)! \times 3!$$

両端に並ぶ順列

大人が5人・子どもが3人いる。
全員が一列に並ぶ。
端っこは大人が立っておく順列$${}_5 \mathrm{P}_2! \times ((5-2)+3)!$$

プレゼント交換

完全順列に対応する。

$0!=1$ など理解

順列と組合せの計算と意味の正確な理解と見方を整理します!

階乗、順列と組合せで $0!$, ${}_n\mathrm{P}_0$, ${}_n\mathrm{C}_0$ がナゼ 1 かを確かめましょう。

今回の内容です:

  • 順列の計算記号と組合せの計算記号の考え方を、「順列と組合せ」の意味を通して理解する
  • 文字の定義域として許される値を正確にきちっと整理する

階乗と順列、組合せの公式と意味

場合の数の単元は、並べたり選んだりする単元です。何を並べたり選んだりするかによって単位が変わります。今回は「人」を並べたり選んだりすることに統一します。

階乗(factorial)

階乗とは、$n \geqq 1$ としたときの、

$$n! = n \times (n-1) \times \cdots \times 2 \times 1$$

のことです。

中学校で学ぶ樹形図の考え方を思い出せば、$n!$ は、

$n$人の人物が並ぶときの並び方の総数

という意味になります。

$$n! = n \times (n-1) \times \cdots \times 2 \times 1$$

順列(permutation)

順列とは、次のように並べることを言います。

何人かの中から、数人選び、並べること

これが順列の意味です。

この並べ方を計算式にしましょう。

$n$ 人の中から、$r$ 人を選び並べる場合の数を求めるときは、

$$\frac{n!}{(n-r)!}$$

という計算になります。この計算式は ${}_n {\mathrm P}_r$ という記号で表します。

また、これは次のようにもなります。

$$n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1)$$

$${}_n {\mathrm P}_r = \frac{n!}{(n-r)!}=n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1)$$

組合せ(Combination)

組合せとは、次のように選ぶことを言います。

何人かの中から、数人選ぶこと

これが組合せの意味です。

この選び方を計算式にしましょう。

$n$ 人の中から、$r$ 人選ぶことの場合の数を求めるときは、

$$\frac{n!}{(n-r)! \times r!} = \frac{{}_n{\mathrm P}_r}{r!}$$

という計算になります。この計算式は ${}_n {\mathrm C}_r$ という記号で表します。

また、これは次のようにもなります。

$$\frac{n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1)}{1 \times 2 \times \cdots r}$$

$$\begin{array}{cl}
{}_n {\mathrm C}_r & \displaystyle = \frac{{}_n{\mathrm P}_r}{r!} \\
& \displaystyle =\frac{n!}{(n-r)! \times r!} \\
& \displaystyle =\frac{n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1)}{1 \times 2 \times \cdots r} \\
\end{array}$$

この順番にしっかりと注意しておいてください。

階乗と順列、組合せの公式の条件

何か気にしていないことに気付かないでしょうか?

そうです。$n$ と $r$ の条件を決めていません。階乗の式は、$1 \leqq n$ の自然数と定めましたが、他の式はどうでしょうか?

全ての式を俯瞰して、条件を吟味しましょう。

  • 全ての公式に、$n!$ がある→全ての公式で $1 \leqq n$ である
  • 順列の公式は、$r=n$であると、分母に $0!$ が現れる→ $r < n$ が必要である(この時点では、なんと ${}_n {\mathrm P}_n$ の計算は定義式から導けない!)
  • 組合せの公式は、$r=n$ や $r=0$ であると、分母に $0!$ が現れる→ $0 < r <n$ が必要である(この時点では、なんと ${}_n {\mathrm C}_n$ の計算は定義式から導けない!)

実は、この段階では、$0!$ や ${}_n {\mathrm P}_n$, ${}_n {\mathrm P}_0$ , ${}_n {\mathrm C}_n$, ${}_n {\mathrm C}_0$ の値は定義の公式から導くことができません。

これでは困りますね。。←なぜ、困るでしょうか?

例えば、${}_n {\mathrm C}_n$ という $n$ 人全員を選ぶ計算が同じ式で出来ません。

${}_n {\mathrm P}_n$ と $n!$ の意味

公式の意味を考えて、$0! = 1$ 等を作っていきましょう。

まず、${}_n {\mathrm P}_n$ と $0!$ からです。

順列の公式は、$1 \leqq n$ かつ $1\leqq r < n$ のとき、

$${}_n {\mathrm P}_r = \frac{n!}{(n-r)!}$$

でした。

$r=n$ のとき $\displaystyle {}_n {\mathrm P}_n = \frac{n!}{0!}$ となってしまいます。

${}_n {\mathrm P}_n$の数式を計算するのではなく、「意味」を使います。

$n$ 人の中から $n$ 人を選び、並べる総数

$n!$ の意味も同じく次の意味でした。

$n$人の人物が並ぶときの並び方の総数

この意味に沿うように数式の値を決めます!

${}_n {\mathrm P}_n$ と $n!$ は同じものだから、$$n! = \frac{n!}{0!}$$ です。

この式から、$0! = 1$ と定めないと、整合性が保てないことになります。

$0 \leqq n$ のときの $n!$ と、$1 \leqq n$ と $1 \leqq r \leqq n$ のときの ${}_n {\mathrm P}_r$ を定めることができました。

意味も理屈も何も矛盾しないようにするためには、数式の中に登場する $0!$ を $1$ と解釈することが必要になります。

$0! = 1$ という式は「ゼロとビックリマークとイチ」という数字の関係ばかり見ていると全く理解できない式です。ただ、「順列の意味」を見てあげると完璧な数式と見えるようになります。

${}_n {\mathrm P}_0$ の意味

$0!=1$という式を手に入れました。$r=0$ として、${}_n {\mathrm P}_0$ を考えましょう。

$${}_n {\mathrm P}_0 = \frac{n!}{(n-0)!} = \frac{n!}{n!} = 1$$

となり、なんの疑問もなく計算できます。だから、${}_n {\mathrm P}_0=1$ です。

次に、${}_n {\mathrm P}_0=1$ の意味を考えます。

そもそも ${}_n {\mathrm P}_0=1$ に意味なんてあるのでしょうか?

$n$ 人の中から、誰も選ばずに、並べる場合の数の総数は「1」通り

つまり、何も選ばないという場合の1通りが ${}_n {\mathrm P}_0$ の計算結果と合致しています。

${}_n {\mathrm P}_0$ は「計算的」にも「順列の意味的」にも「1」が妥当と分かりました。

$1 \leqq n$ と $0 \leqq r \leqq n$ のときの ${}_n {\mathrm P}_r$ を定めることができました。

${}_n {\mathrm C}_n$ と ${}_n {\mathrm C}_0$ との意味

$0! = 1$ を使って、${}_n {\mathrm C}_n$ の値も ${}_n {\mathrm C}_0$ の値も計算しましょう。

ただし、$1 \leqq n$ かつ $0 < r < n$ でした。

$${}_n {\mathrm C}_n = \frac{n!}{n!(n-n)!} = \frac{n!}{n! \times 0!} = 1$$

$${}_n {\mathrm C}_0 = \frac{n!}{0!(n-0)!} = \frac{n!}{0! \times n!} = 1$$

すなわち、${}_n {\mathrm C}_n = {}_n {\mathrm C}_0 =1$ が得られます。

これより、組合せの ${}_n {\mathrm C}_r$ も、$1 \leqq n$ で $0 \leqq r \leqq n$ のときに定めることができました。

さて、この計算結果は、組合せの意味と合致しているでしょうか?

$n$ 人の中から $n$ 人を選ぶことは、全員を選ぶという意味で「1」通りだけ

したがって、${}_n {\mathrm C}_n$ の計算結果と、組合せは合致しています。

$n$ 人の中から $0$ 人を選ぶことは、誰も選ばないという意味で「1」通りだけ

こちらも、${}_n {\mathrm C}_0$ の計算結果と、組合せは合致しています。

階乗と順列、組合せの意味と計算のまとめ

階乗の $0! = 1$ という式は、計算で自動的に求まるのではありません。

階乗や順列、組合せの公式は、元来の意味を合わせて考慮することで、${}_n {\mathrm P}_r$ も ${}_n {\mathrm C}_r$ も便利な公式になるのです。

不思議な式ですが、意味と数式の整合性を保つことから、$0! = 1$ が決まります。

$0!=1$ が自然な式としか思えなくなります。

今回は、$n=0$ のときの、${}_0 {\mathrm P}_0$ と ${}_0 {\mathrm C}_0$ の計算はしていませんが、是非自分で考えてみてください。

ここまで、お読みいただき、ありがとうございます。

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