
因数分解なんて、大人になってから使わないよ。
因数分解なんて、社会で使わないよ。と多く耳にします。
すなわち「因数分解意味分からん」ともよく聞きます。
この質問に回答します → その通り!、使いません!
えっ、じゃあ、なんで勉強しているの?ってなります。
これらに答える内容を書きました。
目次
因数分解を使う場面
「因数分解を使う」という意味には複数あって、「因数分解の意味は?」という質問と「自分が大人になったときに日常生活で因数分解を使うの?」という質問が混ざっています。

因数分解を使う場面
大人になって因数分解をいつ使うかについて、理数工学的な職業で計算を実行する仕事に就く人は、実際に利用するもしくは計算の裏側に因数分解が働いているという意味で、因数分解が必要であるイメージが持てます。
ネットで検索してみると、「因数分解(数学)は、論理的な考え方の練習のために勉強するのだよ」という意見が多くあります。たしかに一理あるのですが、因数分解を勉強する意義への回答には、遥かに遠回りし過ぎていると感じます。)

なんで因数分解を勉強するの?
「なんで因数分解を勉強するの?大人になって必要なの?」と生徒に聞かれたら、私は「使いません!」と答えます。
余計、意味が分からなくなると思いますが、次のことも、書いていきます。
因数分解をいつ使うの?
因数分解をいつ使うかといえば、一番簡単な答えは「方程式を解くとき」です。??と思うかもしれませんが、これについても解説します。
因数分解の意味は?
因数分解の意味については、方程式を考えてあげると"確かな意味付け" を行うことができます。いろいろな話題と織り交ぜながら、因数分解の意味と方程式の意味を解説します。
因数分解の基本を思い出す
因数分解の計算方法を復習します。(2次式で説明します。)
2次式とは、2乗の項がある式(3乗以上の項がない)のことです。
例えば、$x^2-5x$ や $-x^2 + 5x$, $x^2 - 5x + 6$ という式のことです。
因数分解とは、このような式を、より簡単な式の積(今回は1次式と1次式)で表現するテクニック、もしくは表現した結果のことです。
因数分解の具体例①
$x^2 - 5x$ という式を考えてみましょう。
共通因数でまとめる、といった技法を習いました。
今回の式では、次のように計算できますね。
$x^2 - 5x = x(x-5)$
もともとの式を「$x$ という1次式」と「$x-5$ という1次式」の積で表現することができました。→まさしく、因数分解です。
大切なことは、$x(x-5)$ が、本当に、$x^2-5x$ と同じ式なのか。このためには、$x(x-5)$ を分配法則で、$x^2-5x$ になるかを確かめます。
$x(x-5) = x \times (x-5)$ $= x \times x \ - \ x \times 5 = x^2-5x$
因数分解の具体例②
$x^2 - 5x + 6$ という式を考えてみましょう。
学校では、「◯+□=$-5$」と「◯×□=$6$」に当てはまる数字を探して、$(x + \bigcirc)(x + \square)$としなさい、と習います。
今回は、◯と□は、$-2$と$-3$であれば、ピッタリ当てはまります。
$$x^2 - 5x + 6 = (x-2)(x-3)$$
今回も、逆に計算をして、両辺が一致するものだということを確認することも大切です。
$(x-2)(x-3)$について、分配法則を丁寧に利用して、展開しすると、ちゃんと $x^2 - 5x + 6$ になります。
この作業で、$x^2 - 5x+6$ と $(x-2)(x-3)$ がピッタリ同じモノであることが分かります。
$x^2 - 5x + 6 = (x-2)(x-3)$ だし、$(x-2)(x-3) = x^2 - 5x + 6$ ということです。
数学の方程式を思い出す
方程式とは何なのか、を確認しましょう。
方程式とは、文字を含む式のことで、ある特定の数字に対してのみ成り立つ式のことを言います。
方程式の具体例
例えば、$x^2 - 5x + 6 = 0$ という式を考えてみます。この式は「$x$」という文字の式です。
方程式とは?
気をつけて欲しいことは、$x^2 - 5x + 6$ という「文字式」は、方程式ではありません。だって、この式には「=」がないので、成り立つとか成り立たないとか、そういったことが検討できません。
$x^2 - 5x + 6 = 0$ のように、「=」で繋がった1つの式があれば、方程式です。(左辺と右辺が一致するか、「0」になるか、という判定条件が得られるからです。)
方程式を解くとは?
「この文字$x$の部分が数字だったとすると、どんな数値ならば、ピッタリと $0$ になるのかな?」
パッと考えて分かりますか?
私の好きな数字は「8」です。文字 $x$ の部分を「8」に代えてみましょう。($x$ に $8$ を代入する。)
$x^2 - 5x + 6 = 0$
↓
$8^2 - 5 \times 8 + 6 = 0$
↓
$30 = 0$
あらら、ダメですね。左辺と右辺が一致しません。

他の数字を考えてみましょう。
例えば、$x$ に $2$ を代入してみます。
$x^2 - 5x + 6 = 0$
↓
$2^2 - 5 \times 2 + 6 = 0$
↓
$0 = 0$
今回は、左辺と右辺がピッタリ一致しました。
方程式とは、文字を含む式のことで、ある特定の数字に対してのみ成り立つ式です。
$x$ が $2$ のときに、左辺と右辺がピッタリ一致し、この式は成り立ちます。
$2$ を見つけることを方程式を解くと言います。
方程式を解くことへの疑問
ここまでの説明だけだと、以下の疑問を持って当然です。疑問、問いを持つことに恐れないでください。(大事!)
- $x$ が $2$ というのが、ピッタリの数値と分かったけど、他の数値のときにも、方程式は成り立たないの?
- $x$ が $2$ というのが、ピッタリの数値と分かったけれ、どうやって見つけたの?
- そもそも、なんで方程式なんか考えたの?ピッタリな数値なんて見つけて何なのさ?(何の意味があるの?)
1つ目と2つ目の疑問には、因数分解が答えてくれます!
3つ目の疑問には、何かの話題(文章題)を考えてみると、答えが見えます。
方程式をCG・物理学の話題で見る
放物線のお話
アニメ映画でもゲームでも、主人公がジャンプしたり、何かが落下したり、そういった描写があります。
日常生活でも、ジャンプしたり、ボールを投げます。

昔の人(アルキメデスとか、ニュートンが有名です)は、その軌道の仕組みを理解したいと考えていました。
ジャンプしたとき、どのように上がって、どのように下がっていくのか。あなたも、そう思ったことがあるかもしれません。
走り高跳びのようにジャンプしたり、ボールを投げたり、噴水から出る水の形は共通していることに昔の人は気がつきました。これらの形のことを放物線と呼びました。
2次式の登場
実は、この放物線は、2次式と呼ばれるモノで表されることが分かっています。
高校の数学Iでは、2次関数 $y=ax^2+bx+c$ のグラフをかいて、放物線の勉強をします。

放物線から抱く問い
放物線を見ていると、またまた問いが生まれます。(昔の人は、少なくとも、問いを持ったのです。)
- 最も高いところ(最も低いところ)の地点が分からないかな?
- 地面に着地するときの地点も分からないかな?

1つ目の問いは、平方完成というテクニックが解決します。
2つ目の問いに「因数分解・方程式を使う」という指針を使います。
放物線の問いの解決
『物を投げたり、ジャンプしたりしたときに、放物線になるのは分かった。ジャンプして、着地する場所を求めるには、どうしたら良いのですか?』
他にも疑問はありましたが、今回は忘れましょう。

方程式を作ろう
放物線は2次関数というもので表せます。
例えば $y = -x^2 + 5x$ という2次関数を考えます。

$x$ と $y$ の2つの文字があります。
グラフを考えたときに、$x$ が横方向で、$y$ が縦方向です。縦方向とは高さのことです。
つまり、初めの問いは、次のように言い換えられます。
「放物線の高さ $y$ がゼロ(=地面の高さ)のときの、横方向の位置は、どこですか?」
この問いは、今回の式で表現すると、
「 $y=-x^2 + 5x$ の高さ $y$ がゼロ(=地面の高さ)のときの、横方向の位置 $x$ は、どこですか?」
となります。
$y=0$ として、さらに問題を言い換えてみましょう。
「$-x^2 + 5x = 0$ のときの、横方向の位置は、どこですか?」

もう気がつきましたか?
この問いに答えるためには、「方程式 $-x^2 + 5x = 0$」が成り立つピッタリの数値 $x$を求めればよい、と言えます。
つまり、地面に着地する瞬間の場所を計算で求めたければ、方程式を考えてあげれば良いわけです。
これが、方程式の意味、方程式が有意義なものということです。
因数分解を利用してみよう
さて、方程式ができたところで、初めの問題が再燃します。特定のピッタリの数値をどうやって求めればいいんだろう?
因数分解してみてください。
すると、特定のピッタリの数値を見つけるヒントが見えるのです(不思議!)。
$-x^2 + 5x$ を因数分解すると、$-x(x-5)$ だから、今回の問題の方程式は、$$-x(x-5) = 0$$ となる。
ここまでは問題ないですね。
この式を「$-x \times (x-5) = 0$」と見直します。
そして、初めの問い(動機)を思い出しましょう。
「この式の文字の部分に当てはめて、ピッタリと成り立つ数値は何だろうな?」
$-x$ と $x-5$ を掛け算して、ゼロになるような、$x$を見つけるわけですね。

答えは、$0$ と $5$ です!
どうやって見つけたかというと、2つの数字を掛けてゼロになるんだったら、どっちかの数字がゼロでないといけない、という考えたからです。
例えば、$-x$ が $0$であるためには、$x=0$ であればOK。そして、$x-5$ が $0$ であるためには、$x=5$ であればOKです。
↑↑ここが因数分解の意義です↑↑
本当に、代入したらピッタリになるのか? $-x(x - 5) = 0$ の方程式に代入して確かめましょう。
$x=0$ のとき
$-x \times (x-5)$
↓
$ - 0 \times (0-5)$
↓
$0 \times (-5)$
↓
$0$
$x=5$ のとき
$-x \times (x-5)$
↓
$-5 \times (5-5)$
↓
$ -5 \times 0$
↓
$0$
計算結果の結論
この確かめで、$x$ が $0$ と $5$ のとき、$-x^2+5x=0$ にピッタリ当てはまる数値である、と分かりました。
すなわち、5の場所で着地するということです。(x=0の場所は、スタート地点です。)
グラフのメモリの単位が「メートル」ならば、「0地点からボールを投げて、ボールは放物線を描き、5m離れた場所に落ちた」と言えます。
数学を他の話題へ応用する
ボールが地面に着地する場所の計算だとかは、大人になっても利用しません。
数学的な理論を応用する
どちらかと言うと、「因数分解が絶対に必要!」というよりは、こういった計算を使わなくても日々問題なく "便利に" 暮らせるように、誰かがセッティングしてくれています。
(CGのアニメやゲームを見ること、飛行機が飛ぶこと、などなど。)

必要なことは、あなたが何をするのか、何をやりたいかの方です。
ここまで述べた知識は、あなたがイノベーションを起こすときに、もしかしたら、役に立つ事項なのかもしれません。
例えば、スポーツをしている人は沢山います。
どのスポーツでも極めるときには、頭で理論を考えることが大事です。このときに、数学の方程式の理論を持ち出すと役に立つかもしれません。
また、CGのアニメやゲームで、ジャンプの軌道も、ボールの軌道も、目安で作られていたら、どこかで違和感を感じると思います。
(例えば、ルネサンス以前の絵画では遠近法という理論がなく、目分量で奥行きを表現していました。おかしな絵画が散見されます。)
数学的な見方ができる
ここまで一緒に見てきた数学の見方は、「数学ができる人には当たり前に見えている光景」です。

なので、今回、きちんと整理して発信してみました。
なぜ、こういった数学の見方が得意な方と苦手な方に大きく分かれてしまうのかを考えてみました。
- 国語が苦手と言って文章題をしないから:文章題こそが、数学以外の世界から、数学を見つめる機会です。文章の解釈や文章からの立式が難しいという理由で全く理解しないままでいる、という方が多くいます。
- 理科が嫌と言って文系で物理をしないから:今回は、数学を、特に物理の世界から見つめています。理系は物理をある程度するので、こういった見方ができます。文系で物理との付き合いが希薄である方は、数学の世界だけに閉じ籠って訳が分からない、と藻搔いてしまいます。
学校教育の問題ではありますが、数学の世界に閉じこもって喚くのではなく、実は数学以外の世界から数学を見つめることが大切なのです。
数学の見方が広がると、世界の見え方も変わります。好奇心が刺激され、より幅広く物事を捉えられます。
これは数理的なモノの見方と呼ばれます。
これによって人としての知見を広げることができます。
なぜ因数分解を勉強するの?(まとめ)
CGと言いながら、あまり、CGを見せることができなかったことが心残りです。
もっと、実際のCGアニメの主人公のジャンプシーンなどから問題を設定したかったです。

因数分解の意義を伝えるために、CG・物理学の話題から数学を見てきました。
- ボールを飛ばしたり、ジャンプしたりするときの軌道を放物線です。CGで正確に表現するには、どうしたら良いのだろうか(⬅️やっていない・笑)。特に、物を投げたときに、地面とぶつかる場所を計算で求めることができれば、数学はCGの役に立つ!
- 放物線は、2次関数 $y = ax^2 + bx + c$(今回は、$y=-x^2+5x$)という式で表現されるらしい
- 高さがゼロの場所(=地面)のトコロを調べたいのだから、2次関数の式を $y=0$ とする。
- $ax^2 + bx+c = 0$(今回は $-x^2 + 5x = 0$ という式)は方程式だ。(方程式は、モノを投げたり、ジャンプしたりする観点からは、地面との着地点を求める式という意味がある!)
- 方程式の文字 $x$ に代入して成り立つピッタリの数値を探すことが問いだった。
- 因数分解がピッタリの数値を探すのに役に立つ!!
- こういったことは、たしかに、将来使わない人が多い。
- でも、CGの仕組みや、放物線の仕組みが因数分解で解決できるのだと知っていると、もしくは、因数分解が世の中のベースにあることを知っていると、モノの見方が広がります。

思っているよりも、なかなか長文になってしまいました。授業で丁寧に伝える機会も(なぜか)あまり取ることができませんので、一度まとめてみました。
前提条件で、いささかオカシイ所がありますが、ご愛嬌で許してください。
ここまで、ながながとした文章を、飽きずにお読みいただき、どうもありがとうございます。