
「博士人材(理学)と科学」, 「科学と教育」, 「中等教育と高等教育」もしくは「高等教育と博士人材」を論じた文献は多くある.
しかし, 博士人材と中等教育の関係(キャリアパス)について言及した文献は少ない.
- 中等教育→中学校と高校
- 高等教育→大学以上
博士号を取得してから高校の教員となった経験を持つ人は少ないですが, そういった話をしたいと思います.
博士号を取得してから学校現場の教員となる方に、大きな参考としていただきたい.
博士人材と中高教員
理学の博士号取得者が中学教員や高校教員(中高教員)として就職する際に主張される強みとしては次の2点をよく聞く.
- 中学や高校での学習内容への深い理解があること
- 研究指導が可能であること
しかし前者の主張は博士号とは関係なく一般の中高教員の方が得手であることが多い.
後者の主張はスーパーサイエンスハイスクール指定校(SSH校)以外には強みとして主張することができない.
大学院時代での中高教員志望経験
高等教育と中等教育の従事者らの間で, 博士号を持つ中高教員(博士号教員)への関心に差異が存在することを, 私は経験的に感じている.
私が大学院生であるとき, 「私は高校教員(数学)志望である」と他者へ伝える機会が多くあった.
ほとんどの高等教育従事者からは
「大学院での数学の勉強は高校教員にとって重要だ」
と言われた.
しかし, 殆どの中等教育機関従事者からは
「大学院での数学の勉強は高校では必要ない」
と言われた.
教科理解か教職経験か(キャリアパス)
おそらく両者の意見は「数学(教科)の理解を深めるべきだ」と「高校での仕事の経験(教職)を積むことが優先だという意見であると推測できる.
其々の意見を認めることは可能だが, 高等教育と中等教育の従事者らの理解の共有が乏しいことが見受けられる.
このような意見の食い違いは, 博士号取得者の中高教員就職(キャリアパス)への齟齬を生む原因ともなると考えられる.
博士号取得者がその学問内容に精通していることは確かであるから, 博士人材が中等教育には重要な存在であることは言うまでもない.
しかし, 理学の研究一筋であった博士人材が中高教員になることには, いくつかの問題が孕んでいることも容易に挙げられる.
- 就職時の年齢が高いこと
- 教職経験には全く初心者であること
- 一般の中高教員とは(理学的思考への固執などによる)考え方の違いがあること
「大学の下部機関として中等教育がある」と信じる博士号教員(少なからず存在するように思われる)であれば, 一般の教員と協力して学校運営を行うことは困難である.
本稿(このブログ)の目的は, これらのことを踏まえ, 博士号教員の中等教育での立場と存在意義についての理解を深めることである.