
秋田県では, 博士号教員を活躍させるための取り組みが存在する.
この取り組みにおける博士号教員ならではの活動を紹介する.
博士号を取得した者が, 中高教員として一人前になったときには, 中等教育と高等教育へのいずれにも理解を持っていることから, 中等教育と高等教育の架け橋としての役割を期待したい.
秋田県での取り組み
秋田県では, 博士号取得者に特別免許を与え高校教員として就職できる取り組みを平成20年度より行い, 出張授業などの特別授業を実施している.
この上で県内の博士号教員が自らネットワークを作り, 独自の取り組みを展開している. これらの取り組みを[5]を参考に簡単に紹介する.
主要な取り組みとしての特別授業は, 校内外の児童生徒に対しての出張授業である.
出張授業では, 理科の実験指導や次のような授業が実施されている.
それぞれの博士号教員が, 自らの専門分野を踏まえ, 大学(院)の内容や最新の研究の話題と学校の教科書内容を関連させた縦断的な授業を行っている.
児童生徒にとっては, 現在の勉強とこの先の勉強の繋がりを知る有意義な機会となる.
なお, 博士号教員が実施する授業と大学教員の児童生徒への講義には異なる面が見られる.
秋田県の博士号教員は, 生徒の知る知識や言葉を踏まえた上で授業を進めている.
- 教職の知識を有しているか
- 生徒理解があるか
これは秋田県の博士号教員がよく生徒理解をし, その上で教科と教職の専門性を発揮していることを意味する.
そして, 博士号教員による教育研究会の活動がある.
この教育研究会は, 秋田県の博士号教員の自主的な取り組みである. この取り組みでの活動として, 高校生に対する科学教育である「あきたサイエンスカンファレンス」や「未来の博士養成講座」がある.
いずれも高校教科単元の内容に捉われない科学教育であり, 研究経験と深い専門性の所持があるからこそ実現が可能になっているように考えられる.
以上のような取り組みが実現している背景には, この取り組みに対する他の教員の理解が大きいことにも注意する必要がある.
※2017年10月時点の執筆である.
博士号教員への期待
ここでは秋田県の取り組みを踏まえ博士号教員に期待することを述べる.
博士号教員は, 一般の中高教員としての仕事だけではなく, その専門的な知識や技能を応用し, 中等教育を発展させる務めも持っているのではないだろうかと考える.
博士号教員には, 研究者の言葉が分かり, かつ中学や高校の教育現場の言葉が分かる存在であることが期待される.
中等教育と高等教育を俯瞰的に観ることができ, 双方への理解を促すことができる架け橋としての存在であれば, 教育を新しく発展させる役割を担うことが可能である.
例えば, 生徒の目線の言葉で, 大学(院)の高度な学問内容を伝えることが挙げられる.
より強い期待をすれば, 高等教育(大学)の学問内容を中等教育の立場から捉えることと言える.
さらに博士課程での理学への研究経験や論文執筆経験を応用し, 生徒の育成を通じた結果として教育という学問の発展に寄与することも期待したい.
これらは中高教員に必要な研究や自己研修の力とも言える.
以上のように, 校内外での博士号教員の活躍を期待するのである.
中等教育と高等教育を結び, 教育をより発展させる役割を果たして欲しい.
このような意味で博士号教員が中等教育における研究・研修を牽引できる存在に育つことを期待する.
最後に, SSH校での課題研究や研究指導には, 研究を充分に経験したことのある博士号教員の活躍がやはり見出せることに言及しておく.