複素数を習うと、まず初めに、虚数単位 $i$ を習います。この $i$ の存在を認識するためには、数学の立場を知っておかなければなりません。しかし、この数学の立場を授業で習うこと、ネットの情報で見つけることは難しいと思います。

複素数は、(2次)方程式に解を必ず存在させるために導入したんだよ、という説明はありますが、次のことに疑問を持つ方がいらっしゃいます。このブログは、この疑問に解答します:

  • 虚数単位 $i$ は想像上の数字でしょ!!存在するの?

方程式に解を必ず存在させるために便宜上導入した、という意見は、ごもっともです。しかし、現実の世界の存在数学の立場を区別して理解することで、初めて理解を深めることができると思っています。授業では、ほとんど触れられない、この点を解説致します。

今回は、複素数の計算については、述べていません。虚数単位 $i$ を導入する立場を「便宜上」という説明だけではなく、数学の立場という観点を説明すること、現実の事柄と結びつけることは諦めよwという説明で解説をしております。学校の授業で、ほとんど触れられない、数学の世界の見方の解説を行っています。

このブログで出てくる「実数=モノの長さを測るために必要な数」という文言は、以下のブログで詳しく解説しております。

数学の実数解とかの実数とは何ですか | ますレッスン教室

実数という言葉が高校の教科書には、よく出てくるにも関わらず、よく分からんと思われているかもしれません。よく分からない理由は、実感がないからだと思います。この記…

虚数(複素数)は分からないモノ

数学に限らず何か新しい事柄を習うと、その事柄を自分の知っていることと結びつけようと人間の思考は無意識に働きます。これが「分かる」という仕組みです。新しい事柄と自身の知識が分かち合うこと分かったと感じることできるのです。

数学を学習するときは、新しく習ったことに対して、数字のルールや図形など自分自身の知っている事柄と結びつけて理解を深めます。

しかし、虚数(複素数)は、「結びつけるための自分の知識」が無い概念となります。

「自分の知っていることと結びつける」ことができないモノの一つが、虚数です。虚数は自分の知っていることと結びつけて理解をするのは無理なので、そうではなく、もっと純粋な気持ちを持って存在を認めることが必要です

このために、現実の世界での存在数学の世界での存在の立場を区別しましょう。

虚数(複素数)の存在は現実ではなく数学の世界で考える

数字や数式の存在の立場を3つ整理します。これらは完全に分類できることではありませんが、高校数学レベルでの分類をしてみます。

  • 現実世界で実際に目に見える所に存在する事柄(例えば、実数などの数、平均値などの統計量、放物線などの曲線、論理などの命題、、)
  • 現実世界で目に見えるモノの陰に存在する事柄、現実世界で目に見えるモノの仕組みを記述する事柄(例えば、波動を表す三角関数、物体の動きを定める微分方程式、、、)
  • 現実の世界には存在せず、数学の世界だけでのみで定められる事柄

虚数(複素数)は、③番目の捉え方をしなければならない事柄になります。

①や②の捉え方ができるものは、目に見える実際の事柄と数学を結びつけることで分かち合う(分かる)ことが可能です。しかし、虚数は①や②の捉え方をしようとすると理解できません。①や②のように、現実世界で実際に目で見ることのできる事柄と結びつけて分かろうとすると、虚数(複素数)は永遠に分からないと思います。

この点が、複素数が数学の他の事柄と違って、違和感を抱くことになる原因です。

実は、複素数を探究していけば、②番目の捉え方をすることもできるようになります。現実の世界の裏の仕組みに虚数が現れることが知られています。しかし、さしあたっては、③番目の理解ができるようになります。

現実の事柄と結びつけることのできない(③番目)虚数は、どのように理解をすれば良いのでしょうか?

虚数(複素数)とは何かの理解の仕方

虚数(複素数)の理解の仕方を伝えます。この回答は次の通りです。

虚数が現実世界に存在するかを探索することは諦めて、(①や②の考え方は諦める)

ただ単に、その存在を認めることです。(③の考え方をする。)

もっとも分かりやすい例えとしては、メーテルリンクの『青い鳥』と言えます。

虚数の存在は、現実世界と結びつけて考えるのではなく、ただ単に、その存在を信じること(仮説上の存在として捉えること)をします。現実世界に存在するかどうかは置いておき、「計算によって出てきたもの」に「名前を与えたモノ」と思います。

以上で述べたことを詳述します。以下の順番で考えてください!

  • $x^2 = -1$ という式の解は、現実世界には存在しない。こんな数は知らない。ここでいう現実の世界(実数の範囲)とは、モノの長さを表す数のことです。$x^2 = -1$ を満たす数は、モノの長さを表す数としては存在しません。
  • 「モノの長さを表す数」には存在しません。しかし、これ以外の何かしらを表す数があるかもしれない。 ←これが何かは分からない。
  • この存在を「Imaginary Unit(虚数単位)」としてみましょう。略して、「 $i$ 」としてみましょう。←オドオドしながら仮定してみる。
  • 2次方程式だから2個解があってほしい。もう一つ解があれば嬉しい。これは「 $-i$ 」で良いのではないだろうか?←本当に良いのかなー?

このように考えています。赤色の疑問は、ずっと抱いたままで構いません。現実とはキッパリと切り離し、$x^2 = -1$ となる見えない存在「Imaginary Unit( $i$ )」という名前を付けました

この「モノ(存在)」が何を意味しているのは分からないけれども、とりあえず、こういった「数」を考えましょう、という方針を持っただけ。

とにかく、$i$ という存在は、今産み出されました。私たちが、目に見えない存在に名前を付けて、存在価値を見出したのです!

$i$ は現実の何処にいるのかを探すモノ(存在)ではなく、今ここに存在するモノと考えます!

虚数(複素数)の存在は本当に良いの?

今、目に見えない対象に名前を付けて、虚数単位 $i$ を産み出しました。本当に良いことなのでしょうか。

この答えは、『今後、この $i$ で色々な計算をしていって矛盾が出てしまったら(現実の世界の事柄と矛盾)、駄目なことをしてしまっていたのだ』と考えることにして、良いか悪いかは(今は)何も考えずにいることにします。

言い換えると、$x^2 = -1$ となる存在は目に見えないが「 $i$ という数」が存在すると仮説を立てた訳です。(存在を仮定した訳です。)そして、この仮説の下、数学(虚数)の計算をしていって矛盾すれば、この仮説はダメ(虚数を考えてはいけない)、矛盾しなければ仮説はOK(虚数の存在は否定されない)と考える訳です。

今後、数学(虚数)の計算をしていきます、そして現実と矛盾するか検討していきます。実際は、現実と矛盾することは全く起きません。(今後、確かめます。)したがって、我々は、(今は想像上の空物ですが、)虚数単位 $i$ の存在を認めるに至ることができるのです。

別に、こういった数が存在しても現実には何も迷惑かけないのだから、存在しても良いのではないだろうか?

この文言こそが、虚数の存在の立場の理解にピッタリです。

虚数(複素数)の存在に対して尽きない疑問の数々

虚数単位 $i$ を新しく定めました。この存在を「数」として認めてあげるには、四則演算などができなければ「数」と思えないと思います。

四則演算はできるのでしょうか?

答えは、今の時点では全く分からない、ということです。

(今後、四則演算のルールを自分で決めていき、虚数が我々の思う数の性質を満たすことを調べていきます。実は、この新しく決めていくルールが、現実と全く矛盾しないので、虚数の存在を認められることになるのです!)

では、どういった性質があれば「数」と認められるのでしょうか?私たちの知っている「数」に成り立つ性質が虚数 $i$ にも成り立つかを調べたら良い訳ですね。

まず、$i \times i$ の答えは、すぐに分かります。$i^2 = -1$ です。つまり、$i$ は2乗する計算ができるのですね!

他の計算(性質)を検討しましょう!

  • $i$ が「数」としての四則演算ができるかは全く分かりません。 $i \times i = -1$ という掛け算だけができると分かっていることです。
  • $i$ と 零 $0$ の大小関係は全く分かりません。正の数なのか、負の数なのかも分かりません。
  • $i$ が現実世界に存在するのかも分かりません。モノの長さを測るために必要な数には現れないことは分かっている。

これらの点については、次回以降のブログで検証します。

現時点では、ただ単に、2乗して $-1$ となる「モノ(存在)」を、$i$ と $-i$ と置きます、と考えただけです。それ以外のことは何もしておりません。

虚数(複素数)の存在の立場のまとめ

$x^2 = -1$ の解は、実数の範囲(モノの長さを測るために必要な数)では存在しない。しかし、我々の目には見えない数の存在があると思って、これを「 $i$ 」と置く。性質は、$i^2 = -1$ だけ。

この $i$ を含む数の世界を複素数と呼び、この複素数の計算を調べ、矛盾が起きなければ、虚数単位 $i$ の存在を認める。

このように考えてください。

したがって、『青い鳥』の物語のように、虚数は現実世界のドコかにあるかを見つけることで、その存在意義を確かめるのではなく、我々が名前を付けてあげたことによって、その存在意義を確かめることができる。

このように考えて貰えれば良いかと思います。

ここまで、お読みいただきありがとうございます。

このブログの続きと、連載の説明ブログは以下のリンクです:

虚数単位iがルートマイナス1とは本当ですか? | ますレッスン教室

虚数単位のことを $i$ と名付けました。つまり、$i^2 = -1$ となる存在のことを虚数単位 $i$ と呼びます。頻繁に、i は ルートマイナス1( $i = \sqrt{-1}$ )と表記され…

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