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分配法則などの役割

なぜ、中学校の授業の最初に、分配法則、交換法則、結合法則を習うのでしょうか?

「計算するときに成り立つことだから、計算を早くしたり、複雑な計算ができるようになるために、習っているんだよ。」

というのは、半分正解です。

算数と数学の違いを踏まえて、残りの半分(数学という学問における法則とは)を説明します。

分配法則、交換法則、結合法則

3つの法則を文字を使って整理しましょう。

  • 分配法則:$a \times (b+c) = a \times b + a \times c$
  • 交換法則:$a + b = b + a$ もしくは $a \times b = b \times a$
  • 結合法則:$(a + b) + c = a + (b+c)$ もしくは $(a \times b) \times c = a \times (b \times c)$

眺めるだけではなく、具体的な数字で確かめることが大切です。

例えば、$a = 3$, $b=4$, $c=5$ とします。

分配法則について

分配法則は、次の通り成り立ちます!

(左辺) = $3 \times (4 + 5)$ = $3 \times 9 = 27$

(右辺) = $3 \times 4 + 3 \times 5$ = $12 + 15 = 27$

交換法則について

交換法則は、次の通り成り立ちます!(積の交換法則は省略します。)

(左辺)= $3+4 = 7$

(右辺)= $4+3=7$

結合法則について

結合法則は、次の通り成り立ちます!(積の結合法則は省略します。)

(左辺)= $(3+4)+5$ $=7+5=12$

(右辺)= $3+(4+5)$ $=3+9=12$

以上、数の計算に関する法則を確認できました。

数の計算から文字の計算へ

ここで疑問を持つ人が正解です←この疑問が大切!。

文字を使って、「法則だよ」と伝えています。これについて、すぐに腑に落ちているでしょうか?

具体的な数字で3つの法則が成り立つことは信じられる。

でも、文字の計算に、この法則が成り立つの?

ってか、そもそも文字の計算って何?

この疑問は当然の疑問です!

実は、文字の計算では、3つの法則が(元から)成り立つ、のではなく、3つの法則が成り立つように計算を決める(定義する)と考えています!

数学で「法則」を学ぶ理由

分配法則、交換法則、結合法則の役割

分配法則、交換法則、結合法則を学ぶ理由は、次の2つです。

  • 自然数(や分数、小数)の数に共通して成り立つ法則が、分配法則、交換法則、結合法則だから学ぶ
  • 文字の計算や、他の数(マイナス、複素数、ベクトルなど)の計算ルールを決めるために、分配法則、交換法則、結合法則を基準にして決めるから学ぶ

理由の①は多くの皆さんが知っていることかもしれません。

文字の計算、マイナスの数、ベクトルや複素数の計算など、身の周りの秩序で計算法則が分からない数の計算については、「3つの規則が成り立つように計算ルールを決める」という立場で考えます。

算数と数学の考え方の区別

この考え方から、算数と数学の区別をしましょう。

算数とは①の考え方をしていく勉強であり、数学とは②の考え方をしていく学問のことです。

算数の勉強

算数では、自然数(や分数、小数)について数の計算で成り立つ法則を見つけていく勉強をしている。

数学の勉強

新しい「数」を創る(発見する)。算数で見つけた法則をベースにして、その数の計算規則はを理解していく(決めていく)勉強をしている。

このような考え方を頭に入れておくと、算数の殻を破って数学を受け入れやすくなります。

例えば、中学校・高校では、マイナスという新しい数の計算、複素数という新しい数の計算が登場します。これらには数学の力が必要になります。

新しい数の計算のルールを決めるために、今までで知っている数の計算の規則をベースにすることが数学を深く理解するために必要です!

展開公式・理解

数の計算において,次のような分配法則はいつでも成り立つ。

$8 \times (10 + 2) = 8 \times 10 + 8\times2$

文字式の計算でも「分配法則」が必ず成り立つものと要請します。

基本の展開公式について

$a(x+y)$ の展開公式

詳しい解説はこちら

式の展開公式

$a(x+y) = ax+ay$

$(a+b)x = ax+by$

$a(x+y)$ などの展開の計算方法を習得してみよう。

例えば, $3(2+4) = 3\times 2 + 3 \times 4$ という計算です。

解説.

数の計算において, 分配法則がいつでも成り立っている.

$$8 \times (10 + 2) = 8 \times 10 + 8\times2.$$

文字式の計算でも同様の分配法則が必ず成り立つものと要請する.

ゆえに, $a(x+y) = ax + ay$ と $(a+b)x = ax+by$ は成り立つものとする.

同様に, $(a+b)x = ax + bx$ も成り立つとしています。

$(x+a)(x+b)$ の展開公式

詳しい解説はこちら

式の展開公式

$(x+a)(x+b) = x^2 + (a+b)x + ab$

$(x+a)(x+b)$ の展開の計算方法を習得してみよう。

例えば, $(x+2)(x+3) = x^2 + 5x + 6$ という計算です。

解説.

分配法則を利用します.

$a(x+y) = ax + ay$
$(a+b)x = ax + bx$

左辺 $(x+a)(x+b)$ から右辺を導きます.

$$\begin{aligned}
&(x+a)(x+b) \\
&=(x+a)x + (x+a)b \\
&= x^2 + ax + xb + ab \\
&= x^2 + ax + bx + ab\\
&= x^2 + (a+b)x + ab.
\end{aligned}$$

ゆえに, $$(x+a)(x+b) = x^2 + (a+b)x + ab$$ が成立する.

$(x+a)^2$ の展開公式

詳しい解説はこちら

式の展開公式

$(x+a)^2 = x^2 + 2ax + a^2$

$(x+a)^2$ の展開の計算方法を習得してみよう。

例えば, $(x+3)^2 = x^2 + 6x + 9$ という計算です。

解説.

展開の公式を仮定して, 公式を導く.

$(x+a)(x+b) = x^2 + (a+b)x +ab$

左辺 $(x+a)^2$ から, 右辺を導く.

$$\begin{aligned}
&(x + a)^2 \\
&= (x + a)(x + a)\\
&= x^2 + (a+a)x + a\cdot a \\
&= x^2 + 2ax + a^2
\end{aligned}$$

ゆえに, $$(x+a)^2 = x^2 + 2ax + a^2$$ が成立する.

$(x-a)^2$ の展開公式

詳しい解説はこちら

式の展開公式

$(x-a)^2 = x^2 - 2ax + a^2$

$(x-a)^2$ の展開の計算方法を習得してみよう。

例えば, $(x-3)^2 = x^2 - 6x + 9$ という計算です。

解説.

次を仮定して, 公式を導く.

$(x-a)^2 = x^2 + 2ax +a^2$

左辺 $(x-a)^2$ から, 右辺を導く.

$$\begin{aligned}
&(x - a)^2 \\
&= (x + (-a))^2 \\
&= x^2 + \{2 \times (-a)\} x + (-a)^2 \\
&= x^2 - 2ax + a^2
\end{aligned}$$

ゆえに, $$(x-a)^2 = x^2 - 2ax + a^2$$ が成立する.

$(x+a)(x-a)$ の展開公式

詳しい解説はこちら

式の展開公式

$(x+a)(x-a) = x^2 - a^2$

$(x+a)(x-a)$ の展開の計算方法を習得してみよう。

例えば, $(x+3)(x-3) = x^2 - 9$ という計算です。

解説.

次を仮定して, 公式を導く.

$(x+a)(x+b)= x^2 + (a +b)x +ab$

左辺 $(x+a)(x-a)$ から, 右辺を導く.

$$\begin{aligned}
&(x+a)(x-a) \\
&= (x+a)(x+(-a)) \\
&= x^2 + (a + (-a))x + a \cdot (-a) \\
&= x^2 + 0x -a^2\\
&= x^2 -a^2
\end{aligned}$$

ゆえに, $$(x+a)(x-a) = x^2 - a^2$$ が成立する.

折り紙で式の展開

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分配法則とオリガミ

$a(x+y) =ax+ay$

乗法公式とオリガミ

1つ目:$(x+y)^2=x^2+2xy+y^2$

2つ目:$(x-y)^2=x^2 -2xy+y^2$

※ラストの写真は「$x^2$」ではなく「$a^2$」の間違いです。

3つ目:$(x-a)(x+a)=x^2 -a^2$

4つ目:$(x+a)(x+b)=x^2 +(a+b)x +ab$

文字で置き換えて展開する計算のオリガミ

$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2 +2ab +2bc +2ca$

ここまで!

オリガミ(折り紙)で式の展開!

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式の展開のPythonコード

四則演算(加減乗除)とべき乗 $a^b$ の計算方法を確認しておきます。

詳しい証明はこちら

四則演算(加減乗除)とべき乗をPythonで計算してみよう。

演算

足し算は+を使う。引き算は-を使う。掛け算は*を使う。割り算は/を使う。べき乗は**を使う。

Python. $a+b$, $a-b$, $a \times b$, $a \div b$, $a^b$ を計算する。

a = 3
b = 2

print(a + b) #足し算
print(a - b) #引き算
print(a * b) #掛け算
print(a / b) #割り算
print(a ** b) #べき乗

5
1
6
1.5
9

式を展開する

詳しい証明はこちら

式の展開をPythonで計算してみよう。

式の展開

文字式を扱うためにsympyモジュールを利用する。

expand()関数で式を展開する。

Python. $(x+y)(2x+3y)$ を展開する。

import sympy

#xとyを文字として定義する
x = sympy.Symbol('x')
y = sympy.Symbol('y')

#式Pを定義する
P =(x+y)*(2*x + 3*y)

#Pを展開して表示する
print(sympy.expand(P))

#PをLaTeX表示する
display(sympy.expand(P))

数学のまとめノート

「式の展開」とは

多項式の積を単項式の和で表すこと。

分配法則

$a(x+y) = ax + ay$

が成り立つ.

A. 乗法公式(2次式の展開)

  1. $(x+a)(x+b)$ $=x^2 + (a+b)x + ab$
  2. $(x+a)^2 = x^2 + 2ax + a^2$, $(x-a)^2 = x^2 - 2ax + a^2$
  3. $(x+a)(x-a) = x^2-a^2$

B. 乗法公式(3次式の展開)

  1. $(x + a)^3 =x^3 + 3ax^2 + 3a^2x + a^3$, $(x - a)^3 = x^3 - 3ax^2 + 3a^2x - a^3$
  2. $(x + a)(x^2 - ax + a^2)=x^3 + a^3$, $(x - a)(x^2 + ax + a^2) = x^3 - a^3$

C. 乗法公式($n$次式の展開)

  1. $(x+a)^n$ $\displaystyle = \sum_{k=0}^n {}_{n}\mathrm{C}_{k} x^{n-k} a^k$【二項定理
  2. $(x - a)(x^{n-1} +ax^{n-2} +\cdots +a^{n-2}x+a^{n-1})$ $=x^n-a^n$
  3. $(x + a)(x^{n-1} -ax^{n-2} -\cdots -a^{n-2}x+a^{n-1})$ $=x^n+a^n$ ( $n$ が奇数のときのみ)

ポイント解説

基礎

分配法則を基本として, 交換法則結合法則から各公式が導かれる。

A

面積の意味をもつ↓

+α

文字3つの展開公式↓

$(x+y+z)^2$ $=x^2+y^2+z^2 +2xy+2yz+2zx$

B

体積の意味をもつ↓

発展

ある条件のもと任意の関数 $f(x)$ を展開できる(テイラー展開):
$$f(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^m$$

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