【理解】トーラスの数学的な解説

トーラスの定義 $\mathbb{S}^1 \times \mathbb{S}^1$

定義(トーラス)

トーラスとは、平面上に置かれた円を、その平面内で円の外側にある直線を軸として空間内で回転させて得られる立体である。

$(\sqrt{x^2+y^2}- R)^2 + z^2 = r^2$

トーラスの媒介変数表示の式を理解してみよう。

方程式

$R > r > 0$ とする. このとき, トーラスの方程式は

$(\sqrt{x^2+y^2}- R)^2 + z^2 = r^2$

である.

証明.

トーラスの媒介変数表示から方程式を導く.

トーラスを媒介変数 $\theta$ と $\varphi$ を用い, 媒介変数表示すると,

$\left\{\begin{aligned}
x &= (R + r \cos \theta) \cos \varphi \\
y &= (R + r \cos \theta) \sin \varphi \\
z &= r \sin \theta
\end{aligned} \right.$

と表せた.

媒介変数表示を利用して計算すると,

$x^2 + y^2$ $=(R+r\cos \theta)^2 \cos^2 \varphi$ $+(R+r\cos \theta)^2 \sin^2 \varphi$ $=(R+r\cos \theta)^2$

を得られる. $R>r$ より, $R+r\cos \theta >0$ である. また, $x^2 + y^2 > 0$ である.

これより, $\sqrt{x^2+y^2} = R + r\cos \theta$ を得る.

したがって, 連立方程式

$\left\{\begin{aligned}
\sqrt{x^2+y^2} -R &= r \cos \theta \\
z &= r \sin \theta
\end{aligned} \right.$

から $\theta$ を消去すれば,

$(\sqrt{x^2+y^2}- R)^2 + z^2 = r^2$

を得る.

ゆえに, $R > r > 0$ とすると

$(\sqrt{x^2+y^2}- R)^2 + z^2 = r^2$

はトーラスの方程式を表す.

大円の半径 $2$,
(正確には $1 \sim 3$)

小円の半径 $1$

のトーラスです。

$\left\{\begin{aligned}
x &= (R + r \cos \theta) \cos \varphi \\
y &= (R + r \cos \theta) \sin \varphi \\
z &= r \sin \theta \\
\end{aligned} \right. $

トーラスの媒介変数表示の式を理解してみよう。

媒介変数表示

$R>r > 0$, $0 \leq \theta, \varphi < 2 \pi$ とすると, 次の式はトーラスを表す:

$\left\{\begin{aligned}
x &= (R + r \cos \theta) \cos \varphi \\
y &= (R + r \cos \theta) \sin \varphi \\
z &= r \sin \theta
\end{aligned} \right.$

証明.

$xz$ 平面上で半径 $r$ の円周を $xy$ 平面に平行な方向に原点中心に回転することで, トーラスを作成する.

トーラス上のループには名称があった.

$xz$ 平面内で 中心が $(x,z)=(R,0)$ で半径 $r$ の円周は媒介変数 $\theta$ を利用して,

$(x,z)=(R+r\cos \theta, r \sin \theta)$

と表すことができる. ここで, $0 \leq \theta < 2\pi$ が必要である.

この円周上の点を$xz$ 平面に平行な平面で原点中心の回転を行う. この回転角を $0 \leq \varphi < 2 \pi$ とする.

変数 $\theta$ を固定して, $(x,z)=(R+r\cos \theta, r \sin \theta)$ を $xy$ 平面と平行な平面内で原点中心の回転すると

$(x,y)$ $= ((R+r\cos\theta)\cos \varphi, (R+r\cos\theta)\sin \varphi)$, $z = r \sin \theta$

となる.

以上より回転角の変数の $\theta$ と $\varphi$ を動かせば, トーラスが得られることが分かる.

ゆえに, $R>r > 0$, $0 \leq \theta, \varphi < 2 \pi$ とすると,

$\left\{\begin{aligned}
x &= (R + r \cos \theta) \cos \varphi \\
y &= (R + r \cos \theta) \sin \varphi \\
z &= r \sin \theta
\end{aligned} \right.$

はトーラスの媒介変数表示を表す.

大円の半径 $2$,
(正確には $1 \sim 3$)

小円の半径 $1$

のトーラスです。

トーラスの表面積
$S = 4 \pi^2 rR$

トーラスの表面積は, メリディアンループの周の長さ $2\pi$ が、半径 $R$ の円(ロンジチュード)の分 $2 \pi R$ だけあるので,

$2 \pi r \times 2 \pi R = 4 \pi^2 rR$

となる。

トーラスの体積
$V=2 \pi^2 r^2 R$

トーラスの体積は, メリディアンループが作る円の面積 $\pi r^2$ が、半径 $R$ の円(ロンジチュード)の分 $2\pi R$ だけあるので,

$\pi r^2 \times 2 \pi R = 2 \pi^2 r^2 R$

となる。

【コード】Pythonでトーラスを出力

トーラスの媒介変数表示での3Dplot x = (R + r * np.cos(v)) * np.cos(u)y = (R + r * np.cos(v)) * np.sin(u)z = r * np.sin(v)

Pythonで媒介変数表示を利用してトーラスの3次元の図を出力してみよう。

説明

mpl_toolkits.mplot3dモジュールのAxes3Dで3Dグラフを表示する。

トーラスの大円の半径と小円の半径をRrとする。媒介変数uv を $0$ から $2 \pi$ の間で定め, u,v = numpy.meshgrid(u,v)で媒介変数の全ての組み合せを作る。

媒介変数表示を利用したトーラスの3次元座標は

$\left\{\begin{aligned}
x &= (R + r \cos v) \cos u \\
y &= (R + r \cos v) \sin u \\
z &= r \sin v
\end{aligned} \right. $

で表せる。

$R>r > 0$, $0 \leq u, v < 2 \pi$ とする。水平方向の円周の半径が $R-r$ から $R+r$ の長さ(チューブの中心円の半径が $R$ )で, 鉛直方向の円周の半径が $r$ のトーラスの媒介変数表示は次の通り:

$\left\{\begin{aligned}
x &= (R + r \cos v) \cos u \\
y &= (R + r \cos v) \sin u \\
z &= r \sin v
\end{aligned} \right. $

Pythonコード.

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from mpl_toolkits.mplot3d import Axes3D

# トーラスの半径
R = 3  # 大円の半径
r = 1  # 小円の半径

# 媒介変数の範囲
u = np.linspace(0, 2 * np.pi, 100)
v = np.linspace(0, 2 * np.pi, 100)
u, v = np.meshgrid(u, v)

# 媒介変数を用いて座標を計算
x = (R + r * np.cos(v)) * np.cos(u)
y = (R + r * np.cos(v)) * np.sin(u)
z = r * np.sin(v)

# 3Dプロット
fig = plt.figure()
ax = fig.add_subplot(111, projection='3d')
ax.plot_surface(x, y, z, cmap='viridis')
ax.set_box_aspect([np.ptp(coord) for coord in [x, y, z]]) # 3つの軸の目盛を合わせる

# グラフを表示
plt.show()

※ $R$ と $r$ を変更すれば形状が変わります。

【大学】トーラスのトポロジー

トーラス🍩☕️・平坦トーラスのイメージ

トーラスはドーナツの形として有名です。

トーラスのイメージ

穴が1つ空いたモノをトーラスと言います。

ドーナツや浮き輪の表面の形をトーラスと言います。

穴の空いたもの

ミスドでドーナツの写真を撮影しました。

この画像にはトーラスが3つ写っています。

ミスタードーナツ(三重県津駅)で撮影

スタバで撮影した写真も載せておきます。

この画像にはトーラスが2つ写っています。

スターバックス(なんばウォーク店)で撮影

位相的トーラス

トーラスは穴の空いたものなので、コーヒーカップもトーラスです。

コーヒーカップの底が厚くなった状態(コーヒーを満タンに注いだ状態)は穴が1つだけの図形です。だから、コーヒーカップもトーラスです。

このような、底を厚くすることは連続的な変形と言います。連続的な変形で、ドーナツもコーヒーカップも同じトーラスと見なすことを位相的に同じ(同相)といいます。

平坦トーラスのイメージ

ゲームのマップ

ドラゴンクエストのマップなどのように、マップの左から出ると右から出てきて,マップの上から出ると下から出てくる世界はトーラスの形です。

このトーラスの世界アニメ作成しました。

トーラスの展開図

長方形の左から出ると右に出る、上から出ると下から出る、ということは長方形の向かい合う辺がくっついてるということです。

トーラスの展開(Blenderで作成)

長方形の左右の辺同士、上下の辺同士をくっつけるとドーナツの形になります。逆に、ドーナツを展開した形は長方形ということができます。

参考図(トーラス上のループの展開)

トーラスを展開した形を、平坦トーラスといい、これもドーナツやコーヒーカップと同相な図形と言います。

以上が、位相的に同じ(同相)なトーラスというものです。

トーラス上のループの名称(Meridian, Longitude)

定義

トーラスの小円に対応するループのことを, メリディアンループ(経線)という.

大円と平行なトーラス内のループのことを, ロンジチュードループ(緯線)という.

右のドーナツで1つ1つのクルーラーに対応する線がメリディアンです。

左のドーナツでチョコと生地の境目がロンジチュードです。

まとめノート

「トーラス」とは

ドーナツのように空洞が1つある曲面のこと。

方程式

$R, r > 0$ のとき, $(\sqrt{x^2+y^2}- R)^2 + z^2 = r^2$

A. 媒介変数表示

$\left\{ \begin{array}{rl}
x &=& (R + r \cos \theta) \cos \varphi \\
y &=& (R + r \cos \theta) \sin \varphi \\
z &=& r \sin \theta \end{array} \right. $

B. トーラス上のループ

水平方向の円周 $\mathbf{S}^1$ はロンジチュードループ(緯線)であり, 垂直方向の円周 $\mathbf{S}^1$ はメリディアンループ(経線)である。

C. トーラスの計量

表面積:$4\pi^2rR$, 体積:$2\pi^2r^2R$

D. 平坦トーラス

トーラスは長方形の対辺同士を貼り合わせてできる。(トーラスの展開図は長方形である。)

ポイント解説

A

外回りのロンジチュードループの半径が $R+r$, 内回りの半径が $R-r$, メリディアンループの半径が $r$ に対応する.

B

参考図

D

イメージ

発展(位相的性質)

  1. $\mathbf{S}^1 \times \mathbf{S}^1$ と同相
  2. 向き付け可能な種数 $1$ の曲面
  3. オイラー数:$0$
  4. 基本群:$\pi_1(\mathbf{T} ) \cong \mathbf{S}^1 \times \mathbf{S}^1$

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