
順列と組合せの計算と意味の正確な理解と見方を整理します!
階乗、順列と組合せで $0!$, ${}_n\mathrm{P}_0$, ${}_n\mathrm{C}_0$ がナゼ 1 かを確かめましょう。
今回の内容です:
- 順列の計算記号と組合せの計算記号の考え方を、「順列と組合せ」の意味を通して理解する
- 文字の定義域として許される値を正確にきちっと整理する
目次
階乗と順列、組合せの公式と意味
場合の数の単元は、並べたり選んだりする単元です。何を並べたり選んだりするかによって単位が変わります。今回は「人」を並べたり選んだりすることに統一します。
階乗(factorial)
階乗とは、$n \geqq 1$ としたときの、
$$n! = n \times (n-1) \times \cdots \times 2 \times 1$$
のことです。
中学校で学ぶ樹形図の考え方を思い出せば、$n!$ は、
$n$人の人物が並ぶときの並び方の総数
という意味になります。
$$n! = n \times (n-1) \times \cdots \times 2 \times 1$$
順列(permutation)
順列とは、次のように並べることを言います。
何人かの中から、数人選び、並べること
これが順列の意味です。
この並べ方を計算式にしましょう。
$n$ 人の中から、$r$ 人を選び並べる場合の数を求めるときは、
$$\frac{n!}{(n-r)!}$$
という計算になります。この計算式は ${}_n {\mathrm P}_r$ という記号で表します。
また、これは次のようにもなります。
$$n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1)$$
$${}_n {\mathrm P}_r = \frac{n!}{(n-r)!}=n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1)$$
組合せ(Combination)
組合せとは、次のように選ぶことを言います。
何人かの中から、数人選ぶこと
これが組合せの意味です。
この選び方を計算式にしましょう。
$n$ 人の中から、$r$ 人選ぶことの場合の数を求めるときは、
$$\frac{n!}{(n-r)! \times r!} = \frac{{}_n{\mathrm P}_r}{r!}$$
という計算になります。この計算式は ${}_n {\mathrm C}_r$ という記号で表します。
また、これは次のようにもなります。
$$\frac{n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1)}{1 \times 2 \times \cdots r}$$
$$\begin{array}{cl}
{}_n {\mathrm C}_r & \displaystyle = \frac{{}_n{\mathrm P}_r}{r!} \\
& \displaystyle =\frac{n!}{(n-r)! \times r!} \\
& \displaystyle =\frac{n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1)}{1 \times 2 \times \cdots r} \\
\end{array}$$
この順番にしっかりと注意しておいてください。
階乗と順列、組合せの公式の条件
何か気にしていないことに気付かないでしょうか?
そうです。$n$ と $r$ の条件を決めていません。階乗の式は、$1 \leqq n$ の自然数と定めましたが、他の式はどうでしょうか?
全ての式を俯瞰して、条件を吟味しましょう。
- 全ての公式に、$n!$ がある→全ての公式で $1 \leqq n$ である
- 順列の公式は、$r=n$であると、分母に $0!$ が現れる→ $r < n$ が必要である(この時点では、なんと ${}_n {\mathrm P}_n$ の計算は定義式から導けない!)
- 組合せの公式は、$r=n$ や $r=0$ であると、分母に $0!$ が現れる→ $0 < r <n$ が必要である(この時点では、なんと ${}_n {\mathrm C}_n$ の計算は定義式から導けない!)
実は、この段階では、$0!$ や ${}_n {\mathrm P}_n$, ${}_n {\mathrm P}_0$ , ${}_n {\mathrm C}_n$, ${}_n {\mathrm C}_0$ の値は定義の公式から導くことができません。
これでは困りますね。。←なぜ、困るでしょうか?
例えば、${}_n {\mathrm C}_n$ という $n$ 人全員を選ぶ計算が同じ式で出来ません。
${}_n {\mathrm P}_n$ と $n!$ の意味
公式の意味を考えて、$0! = 1$ 等を作っていきましょう。
まず、${}_n {\mathrm P}_n$ と $0!$ からです。
順列の公式は、$1 \leqq n$ かつ $1\leqq r < n$ のとき、
$${}_n {\mathrm P}_r = \frac{n!}{(n-r)!}$$
でした。
$r=n$ のとき $\displaystyle {}_n {\mathrm P}_n = \frac{n!}{0!}$ となってしまいます。
${}_n {\mathrm P}_n$の数式を計算するのではなく、「意味」を使います。
$n$ 人の中から $n$ 人を選び、並べる総数
$n!$ の意味も同じく次の意味でした。
$n$人の人物が並ぶときの並び方の総数
この意味に沿うように数式の値を決めます!
${}_n {\mathrm P}_n$ と $n!$ は同じものだから、$$n! = \frac{n!}{0!}$$ です。
この式から、$0! = 1$ と定めないと、整合性が保てないことになります。
$0 \leqq n$ のときの $n!$ と、$1 \leqq n$ と $1 \leqq r \leqq n$ のときの ${}_n {\mathrm P}_r$ を定めることができました。
意味も理屈も何も矛盾しないようにするためには、数式の中に登場する $0!$ を $1$ と解釈することが必要になります。
$0! = 1$ という式は「ゼロとビックリマークとイチ」という数字の関係ばかり見ていると全く理解できない式です。ただ、「順列の意味」を見てあげると完璧な数式と見えるようになります。
${}_n {\mathrm P}_0$ の意味
$0!=1$という式を手に入れました。$r=0$ として、${}_n {\mathrm P}_0$ を考えましょう。
$${}_n {\mathrm P}_0 = \frac{n!}{(n-0)!} = \frac{n!}{n!} = 1$$
となり、なんの疑問もなく計算できます。だから、${}_n {\mathrm P}_0=1$ です。
次に、${}_n {\mathrm P}_0=1$ の意味を考えます。
そもそも ${}_n {\mathrm P}_0=1$ に意味なんてあるのでしょうか?
$n$ 人の中から、誰も選ばずに、並べる場合の数の総数は「1」通り
つまり、何も選ばないという場合の1通りが ${}_n {\mathrm P}_0$ の計算結果と合致しています。
${}_n {\mathrm P}_0$ は「計算的」にも「順列の意味的」にも「1」が妥当と分かりました。
$1 \leqq n$ と $0 \leqq r \leqq n$ のときの ${}_n {\mathrm P}_r$ を定めることができました。
${}_n {\mathrm C}_n$ と ${}_n {\mathrm C}_0$ との意味
$0! = 1$ を使って、${}_n {\mathrm C}_n$ の値も ${}_n {\mathrm C}_0$ の値も計算しましょう。
ただし、$1 \leqq n$ かつ $0 < r < n$ でした。
$${}_n {\mathrm C}_n = \frac{n!}{n!(n-n)!} = \frac{n!}{n! \times 0!} = 1$$
$${}_n {\mathrm C}_0 = \frac{n!}{0!(n-0)!} = \frac{n!}{0! \times n!} = 1$$
すなわち、${}_n {\mathrm C}_n = {}_n {\mathrm C}_0 =1$ が得られます。
これより、組合せの ${}_n {\mathrm C}_r$ も、$1 \leqq n$ で $0 \leqq r \leqq n$ のときに定めることができました。
さて、この計算結果は、組合せの意味と合致しているでしょうか?
$n$ 人の中から $n$ 人を選ぶことは、全員を選ぶという意味で「1」通りだけ
したがって、${}_n {\mathrm C}_n$ の計算結果と、組合せは合致しています。
$n$ 人の中から $0$ 人を選ぶことは、誰も選ばないという意味で「1」通りだけ
こちらも、${}_n {\mathrm C}_0$ の計算結果と、組合せは合致しています。
階乗と順列、組合せの意味と計算のまとめ
階乗の $0! = 1$ という式は、計算で自動的に求まるのではありません。
階乗や順列、組合せの公式は、元来の意味を合わせて考慮することで、${}_n {\mathrm P}_r$ も ${}_n {\mathrm C}_r$ も便利な公式になるのです。
不思議な式ですが、意味と数式の整合性を保つことから、$0! = 1$ が決まります。
$0!=1$ が自然な式としか思えなくなります。

今回は、$n=0$ のときの、${}_0 {\mathrm P}_0$ と ${}_0 {\mathrm C}_0$ の計算はしていませんが、是非自分で考えてみてください。
ここまで、お読みいただき、ありがとうございます。